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京都御苑 博覧会場跡 その2



京都御苑 博覧会場跡(きょうとぎょえん はくらんかいじょうあと)その2 2010年1月17日訪問

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京都御苑 博覧会場跡地

 明治14年(1881)の第十回からは現在の富小路広場で常設博覧会場として行われた。これは大宮御所が取り壊されることとなり、新たな会場を用意しなければならなかったためである。
 「京都区分一覧之図、改正、附リ山城八郡丹波三郡」は明治9年(1876)の状況を現わした地図でまだ公家町が残っている。大内保存事業は明治10年(1877)に行われた明治天皇大和国並京都行幸以降の事である。明治18年(1885)の「明治新刻京都区組分細図」には既に博覧会場が描かれている。ただし明治25年(1892)の「京都」の方が建物の大きさや屋根形状などは実際に近いだろう。フィールド・ミュージアム京都京都の博覧会の頁には、京都博覧会場の錦絵が掲載されている。中心の主屋を中心にロの字型の回廊が巡り、回廊の外側には、寝殿造りのような両翼が付けられている。先に紹介した「京都博覧会沿革誌」には会場の図面が付けられている。庭園は建物の南北2か所に設けられており、南庭の中には、京都博覧会碑の姿が見える。この碑は明治13年(1880)に建てられたことになっているので、富小路広場に常設会場が造営されたと同時に作られたのであろう。この碑は昭和12年(1937)に岡崎に移され現在はみやこメッセの敷地内にある。明治30年(1897)に岡崎に博覧会館が建設され、大正3年(1914)以降の京都博覧会は、岡崎の京都市勧業館が会場となった。

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京都御苑 博覧会場跡地
京都御苑博覧会館 「京都博覧協会史略」(京都博覧協会 1937年刊)より

 明治16年(1883)の第12回博覧会より、京都府からの職員・博覧会掛が廃止され、京都博覧会社のみで行うように変わっている。京都府知事が槇村から北垣国道に代わり、勧業政策の見直しが行われた時期にあたる。北垣は琵琶湖疏水の建設により停滞する京都を直接的に復興させようとした。明治14年(1881)には、勧業場が廃止され、舎密局は民間に払い下げられている。官による勧業の有り方が次の段階に移行したと考えてよいだろう。

 明治28年(1895)の状況を現わしている「京都市図」には博覧会場の東南に美術学校が作られている。現在の京都市立芸術大学の前身となる京都府画学校である。明治13年(1880)に旧准后里御殿仮校舎で開校している。准后里御殿は京都御苑内の学習院跡の北側、猿ヶ辻の東側に位置していた。明治15年(1882)暴風のため、この校舎が破損し、河原町の織殿に移転している。明治18年(1885)に河原町元勧業場跡(現在の京都ホテルオークラ)へ、そして京都市へ移管され京都市画学校と改名した明治22年(1889)には博覧会東館へ、さらに翌23年(1890)には知恩院通照院へと移転を繰り返す。明治26年(1893)に上記地図の地に新校舎を建てている。その後、京都市美術学校、京都市美術工芸学校、京都市立美術工芸学校へと目まぐるしく改称を繰り返している。明治40年(1907)に吉田川端通荒神口に新校舎を建設し移転している。博覧会場の脇に画学校があったのは、明治26年(1893)から明治40年(1907)までの短い期間であった。

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京都御苑 博覧会場跡地
岡崎博覧会館 「京都博覧協会史略」(京都博覧協会 1937年刊)より

     第一回   京都博覧会  明治5年3月
     第二回   京都博覧会  明治6年3月
     第三回   京都博覧会  明治7年3月
     第四回   京都博覧会  明治8年3月
     第五回   京都博覧会  明治9年3月
     第六回   京都博覧会  明治10年3月
     第七回   京都博覧会  明治11年3月
     第八回   京都博覧会  明治12年3月
     第九回   京都博覧会  明治13年3月
     第十回   京都博覧会  明治14年3月
     第十一回  京都博覧会 明治15年3月
     第十二回  京都博覧会 明治16年3月
     第十三回  京都博覧会 明治17年3月
     第十四回  京都博覧会 明治18年3月
     第十五回  京都染織物絨毯共進会 明治19年4月
     第十六回  新古美術会 明治20年2月
     第十七回  新古加工物品展覧会 明治21年4月
     第十八回  新古物品展覧会 明治22年4月
     第十九回  京都美術博覧会 明治23年4月
     第二十回  京都市工芸物産会 明治24年4月
     第二十一回 京都市美術工芸展覧会 明治25年4月
     第二十二回 京都市新古工芸品展覧会 明治26年4月
     第二十三回 京都市工芸品展覧会 明治27年4月
     第二十四回 時代品展覧会 明治28年4月
     第二十五回 日本青年会が共進会 明治28年10月
     第二十六回 書画展覧会 明治29年4月
     第二十七回 創設廿五年紀念博覧会 明治30年4月
     第二十八回 第一回婦人製品博覧会 明治31年4月
     第二十九回 全国意匠工芸博覧会 明治32年4月
     第三十回  全国貿易品博覧会 明治33年4月
     第三十一回 全国製産品博覧会 明治34年4月
     第三十二回 第二回全国製産品博覧会 明治35年4月
     第三十三回 京都物産陳列大会 明治36年3月
     第三十四回 第三回全国製産品博覧会 明治37年
     第三十五回 第四回全国製産品博覧会 明治38年
     第三十六回 服装品展覧会 明治38年秋季
     第三十七回 凱旋記念内国生産品博覧会 明治39年
     第三十八回 第五回全国製産品博覧会 明治41年
     第三十九回 第六回全国製産品博覧会 明治42年
     第四十回  第七回全国製産品博覧会 明治43年
     第四十一回 創立四十周年記念全国製産品博覧会 明治44年
     第四十二回 第八回全国製産品博覧会 明治45年
     第四十三回 全国美術工芸品博覧会 大正3年
     第四十四回 戦捷記念博覧会 大正4年
     第四十五回 第十五回京都博覧会 大正6年
     第四十六回 第十六回京都博覧会 大正7年
     第四十七回 全国染織興行博覧会 大正8年
     第四十八回 創立五十年記念全国勧業博覧会 大正9年
     第四十九回 内外産業博覧会 大正10年
     第五十回  第一回家庭博覧会 大正11年
     第五十一回 第二回家庭博覧会 大正12年
     第五十二回 優良国産博覧会 大正14年
     第五十三回 国産発展博覧会 大正15年
     第五十四回 昭和夏季博覧会 昭和2年
     第五十五回 明治文化博覧会 昭和3年

(第一回から第三十三回は京都博覧会沿革誌 第三十四回から第五十五回は京都博覧協会史略による)

 みやこメッセにある京都博覧会碑には下記のような部分が付け足されている。

昭和十二年十月京都博覧協会解散ニ際シ旧地ニ建設シタリシ本協会記念碑ハ之レヲ本市勧業館庭園ニ移スコトトシ永久保存ノ允許ヲ得タリ茲ニ昭和十二年十二月移築ヲ完了ス

 「京都博覧会沿革誌」(京都博覧協会 1903年/フジミ書房 1997年復刻)は、京都博覧協会の設立から明治36年(1903)に開催された第三十三回京都物産陳列大会までの記録を纏めたものである。その後の京都博覧協会の推移については、「京都博覧協会史略」(京都博覧協会 1937年刊)を見てゆくこととなる。明治39年(1906)頃まで年1回ないし2回の開催だったが、明治40年(1907)頃より開催されない年が目立つようになる。そして昭和になり、第55回を明治文化博覧会という過去を回想するような名称で開催した後、協会は解散する。解散の理由については下記の文書が非常に的確に表現しているので引用する。

然るに時勢の推移は今や博覧会の地位を著しく動揺変化せしめるに至った。就中本協会の対象であった年次博覧会は、大は国力の振張、小は市勢の発展、その何れに睨合せても、最早この開設を以て過去に於けるが如き功績を挙ぐるには甚だ至難なる時勢となった。率直に言へば経営者としてのコンディションも著しく悪化したのである。況んや前章に述べたるが如く更に此の情勢悪化に拍車を加ふるものの輩出を見るに至っては、役員も会員も、も早好むと好まざるとに拘らず、解散は遂に必至の運命に逢着した。

 京都博覧協会は昭和5年(1930)12月17日に京都ホテルで解散付議の臨時総会を開催している。出資会員は73名、いずれも明治初年の博覧会社員の二代目、三代目であり、父祖の遺志を継いだ者達でもあった。ただし経済不況下のため不動産処理が延び、正式に協会が解散したのは昭和12年(1937)1月21日の清算協議会が終了した時点であった。

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京都御苑 博覧会場跡地
京都市勧業館 「京都博覧協会史略」(京都博覧協会 1937年刊)より

「京都御苑 博覧会場跡 その2」 の地図





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No.名称緯度経度
 博覧会場跡地 35.0188135.7648

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