深泥池
深泥池(みどろがいけ) 2008年05月19日訪問
八坂神社脇のホテルを6時過ぎに出て、市営バス201号に乗車し四条通を西に進む。四条烏丸で下車し、地下鉄に乗り換えて北山を目指す。北山通に面した地上口に出ると目の前に鞍馬街道との交差点が現れる。
この交差点から鞍馬街道の坂道を上り始めると、街道の左手に懐かしい京都信用金庫北山支店の屋根が見える。菊竹清訓はこの京都信用金庫の一連の作品で昭和55年(1980)第21回毎日芸術賞を受賞している。菊竹は京都市内で多くの支店を手がけているので、こうして社寺を訪ねている中で時々出会うが、いずれも想像していたより小振りな外観は町並みに溶け込んでいる。白いタワーパーキングの外壁に漢字で地名を描いた一連の支店は、建築の持つランドマーク性をやや強引ではあるものの表現している。
鞍馬街道をさらに10分程上ると右手に深泥池の水面が広がる。深泥池は「みどろがいけ」あるいは、「みぞろがいけ」と呼ばれる。Google Mapの航空写真を見ると東側から比叡山、八瀬、修学院離宮、宝ヶ池、松ヶ崎そして上賀茂、船山、大文字山、衣笠山へと山地と緑地帯が続いていることが見てとれる。深泥池は、円通寺を通る鞍馬街道で岩倉盆地に接する京都盆地の最も北に位置する。
周囲約1.5キロメートル、面積約9ヘクタールで、流れ込む川はないため、池の水は雨水と周囲からの地下水によっている。そのため栄養分の乏しい貧栄養の水となっている。気候的に暖温帯に属する西日本の市街地に接している場所にもかかわらず、現在でも氷河時代から成育している動植物が数多く残るのはこの水質によっていると考えられている。深泥池には、尾瀬や釧路湿原のような東日本北部の冷温帯に成立する高層湿原や浮島が残っている。このような理由から昭和2年(1927)植物群落が「深泥池水生植物群」として国の天然記念物に指定され、昭和63年(1988)に「深泥池生物群集」として生物群集全体に対象が広げられている。平成14年(2002)に発刊された京都府レッドデータブックには「要継続保護」として掲載されている。 財団法人 京都市文化観光資源保護財団の公式HPでは、この深泥池の特異性を地下水位が高い湿原が有機物の分解を遅くし、池で生息する植物は完全に分解せずに泥炭となって堆積する。この泥炭から発生するメタンガスが、ミズゴケを中心とした種々の生息する植物を浮島として浮上させていると説明している。
深泥池水生動物研究会の公式HPでは、新生代氷河期のうちの最終氷期から現在までの間の自然と人間との関係にも触れている。1500年前頃より人工堰堤が築かれ、灌漑用の溜め池としても使用してきたが、ミズゴケなどの植生を排除しなかったため、高層湿原の性格が失われずに現在に至っている。この背景には、池信仰や先人達の里山保存の存在を上記のHPは指摘し、この池に流入してきた外来種の増加を危惧している。その経験から地元住民団体が果たす役割の大きさに言及している。
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