洛中の町並み（らくちゅうのまちなみ）その１０　油小路通　2009年1月11日訪問

　四条烏丸より市営地下鉄に乗車し、一駅南に下った五条で下車する。地上に出ると目の前に烏丸通が現れる。本日の最初の訪問地は油小路通にあるため、丁度１坊分、西に移動する。油小路通は幕末の油小路事件で有名な通りでもある。

　油小路通は京都市の主要な南北の通りの一つで、平安京の油小路にあたる。紫明通から北は堀川通と新町通の間を通る道となっている。この部分は大徳寺の東北にあたり、区画が整理された住宅地である。
そして紫明通から上立売通までの中断区間は一筋東の小川通が西にずれているため油小路通が続いているようにも見えるが、一旦は姿を消す。そのため表千家・裏千家、本法寺、百々橋、宝鏡寺そして報恩寺などは、小川通に面している。そして上立売通から南側で、堀川通と小川通の間に現在は北行一方通行に規制されている細い道として復活する。このまま塩小路通を越え、東海道本線を潜るガードの手前で堀川通と合流し、南部の幹線道路国道１号となる。しかし国道1号は九条通で西に曲がり東寺の南西角から壬生通と合流し南下する。そのため油小路通は九条通以南、再び名称を油小路通として南下する。久世橋通の手前から阪神高速８号京都線の高架が始まり、景色も一変する。本日訪問を予定している白河天皇陵もこの洛南の幹線道路に面している。これらは油小路通から延伸された部分でもあるので、新油小路通とも称される。また伏見区内を中心に、正式名称ではないものの新堀川通（略して「しんほり」とも）と呼ばれることもある。

　もともとは平安京の官設市場であった東市の外町の東側に面する小路で、この小路沿いに公家の邸宅や左獄（東獄）という獄舎や厨町があった。右京の衰退後、この小路は市街地のほぼ西限となっている。室町時代に入ると商業街となり、酒屋が集中した。
　現在も花屋町通から七条通の間、すなわち堀川通を挟んで西本願寺に面する町並みは、仏具屋町や数珠屋町という名称から分かるように仏具を扱う店が並び、本願寺の寺内町として全国から集まる信者のための小さな旅館が点在している。残念ながら朝早く、店が開いていなかったが、看板を眺めるだけでもこの町の独特な雰囲気が伝わってくる。

　五条通側から南に下っていく。このあたりも建替えが進んでいるようで、伝統的な町家の中に新しい建物頂部が覗くようになっている。また通りを歩いていくと急に駐車場として使われている更地が現れたりする。間口の狭い町家の跡地に建つ新建築は、どれも同じ表情をしている。後でも触れるように、ほぼ１階の間口の全てを駐車場の入口に使用しているため、顔の無くなった建築となっているのが気にかかる。途中の工事現場で、町家再生事業についての説明を記した看板を見かけた。非常に魅力的な建物が建つのではないかと期待できる。しかし店舗利用でない場合は容積も余り採れなく、なかなか採算に合わないのではないだろうか。

　花屋町通を越えると通りの東側に、関西で活躍した設計者・増田清による浄土真宗本願寺派顕道会館が現れる。大正１２年（1923）竣工の和風を感じさせる近代建築である。
　花屋町通より一本南を東西に走る旧花屋町通を過ぎると、通りの西側に御本山御用達　美好園茶舗の看板が目に付く。この辺りは新しい建物に建て替えられつつあるが、美好園はまだ昔ながらの町家の建物で営業している。この町家の先に間口の狭い、１階を車庫とした搭状の建物が並ぶ。この建物の間に小さな祠が祀られ、その傍らに天満屋事件で討死した中井正五郎の石碑が建つ。このあたりに事件の舞台となった旅籠の天満屋があったのであろう。