賀茂別雷神社(上賀茂神社) その2
賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ) その2 2008年05月19日訪問
上賀茂神社の一の鳥居、二の鳥居、楼門そして中門は玉垣や回廊を伴いながら4つの神域を作り出している。
一の鳥居を潜ると1番目の神域として一面の明るい芝生広場が広がる。これは下鴨神社の糺の森とは全く対照的な空間となっている。この芝生の中を真白い参道が一直線に二の鳥居へ伸びる。この参道に面して左に神馬舎、右に御所舎の建物が配されている他には、斎王桜、馬出しの桜、むちうちの桜、見返りの桐、御所桜などが植えられている。
芝の東側は鬱蒼とした森となり、楼門と二の鳥居の間を抜けた楢の小川が、森の中を北から南へ流れる。楢の小川には夜具橋と神事橋の2つの橋が架かり、その東側に梶田社、山森社、奈良社、山口社など多くの摂社末社や賀茂曲水宴(4月第2日曜)が行われる渉渓園などが並ぶ。ちなみに楢の小川はこの夜具橋と酒殿橋の間の流れを指す言葉となっている。
渉渓園はかつての神宮寺の池泉があった場所に昭和35年(1960)皇孫浩宮徳仁親王の生誕の奉祝行事として整備された庭園である。当時、京都府文化財保護課技師であった中根金作の設計により、曲水の宴を行うにふさわしい庭園として造営されている。中根はこの後に、城南宮神苑に曲水の宴を行う「平安の庭」を手がけている。渉渓園は通常非公開であるが、この曲水宴の際に公開される。
夜具橋から二の鳥居そして西面に設けられた鳥居からさらに北に向けて玉垣が設けられ、2番目の神域が造られている。二の鳥居は一の鳥居とは平行には造られていない。白い参道を歩いてきた参拝者はこの二の鳥居で右に45度振られる。二の鳥居を潜るとすぐ右手に楽舎、そして正面に細殿(拝殿)、橋殿(舞殿)、土舎(到着殿)の3つの建物が北西から南西に向かって並ぶ。細殿の前には円錐状に盛られた立砂がある。
既に触れたように上賀茂神社の御神体山は北北西に聳える神山であり、その山頂には加茂別雷神の御降臨された磐座がある。立砂はこの神山をかたどったもので、一種の神籬(降臨される憑代)だとされている。細殿は拝殿とされていることから祭祀・拝礼を行なうための社殿として使われるのであろう。橋殿はその名称どおり御手洗川の上に建てられた建物であり、勅使御拝の殿舎として使われていたと言われている。北東から来る御物忌川は、北西から流れてくる御手洗川と橋殿の北側で合流する。
現在の楽舎、細殿そして土舎は寛永5年(1628)の建造、橋殿はそれより新しい文久3年(1863)二建て替えられたものである。
橋殿の両側には祝橋と禰宜橋がありこれを渡ると須波社、片岡社などの摂社とともに楼門へとつながる玉橋と屋根の架けられた片岡橋が現れる。これらの橋は北東から流れてくる御物忌川に架けられた橋である。玉橋には注連縄が掛けられ、渡ることができないので、片岡橋か禰宜橋の北側に架けられた橋を渡る。
寛永5年(1628)に建造された楼門はほぼ南南西を向いているため、二の鳥居や細殿、橋殿、土舎などの諸堂とも異なった角度に配置されている。楼門の内側は3番目の神域となっている。楼門を潜ると白い空間が左側に開けている。この正面には石段があり、その先に中門が配されている。中門からは東西に回廊が巡らされている。
中門の内側は4番目の神域となっている。当然、この中門の奥は撮影禁止となっているが、左に権殿、右に本殿が建てられている。いずれも橋殿と同じ文久3年(1863)に建て替えられた建物である。
楼門を出て御物忌川と御手洗川を渡り、橋殿まで戻る。さらに御手洗川に沿って森の中に入っていくと、一の鳥居から芝生の中の白い参道を歩いてきた時とは、全く異なる印象を受ける。木漏れ日の中にせせらぎの音だけが聞こえる森は、ひんやりとするとともに湿度の高い生命力に溢れた空間になっている。建物の構成だけではなく、この森を体験することで、上賀茂神社と下鴨神社が同一のコンセプトによって作成された施設であったことが理解できる。
「賀茂別雷神社(上賀茂神社) その2」 の地図
賀茂別雷神社(上賀茂神社) その2 のMarker List
No. | 名称 | 緯度 | 経度 |
---|---|---|---|
01 | ▼ 賀茂別雷神社 一の鳥居 | 35.0581 | 135.7524 |
02 | ▼ 賀茂別雷神社 御所舎 | 35.0591 | 135.7527 |
03 | ▼ 賀茂別雷神社 神場舎 | 35.0594 | 135.7523 |
04 | 賀茂別雷神社 二の鳥居 | 35.0595 | 135.7524 |
05 | ▼ 賀茂別雷神社 細殿 | 35.0598 | 135.7526 |
06 | ▼ 賀茂別雷神社 橋殿 | 35.0598 | 135.7527 |
07 | ▼ 賀茂別雷神社 土舎 | 35.0597 | 135.7528 |
08 | 賀茂別雷神社 御手洗川 | 35.06 | 135.7525 |
09 | 賀茂別雷神社 御物忌川 | 35.0602 | 135.7531 |
10 | ▼ 賀茂別雷神社 玉橋 | 35.06 | 135.7528 |
11 | ▼ 賀茂別雷神社 片岡橋 | 35.0601 | 135.7529 |
12 | ▼ 賀茂別雷神社 楼門 | 35.0601 | 135.7528 |
13 | ▼ 賀茂別雷神社 中門 | 35.0603 | 135.7527 |
14 | 賀茂別雷神社 本殿 | 35.0605 | 135.7526 |
15 | 賀茂別雷神社 権殿 | 35.0604 | 135.7526 |
16 | 賀茂別雷神社 夜具橋 | 35.0591 | 135.753 |
17 | 賀茂別雷神社 奈良橋 | 35.059 | 135.7529 |
18 | 賀茂別雷神社 酒殿橋 | 35.058 | 135.7531 |
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