清水寺 成就院 その2
清水寺 成就院(きよみずでら じょうじゅいん)その2 2008年11月23日訪問
成就院庭園は、相阿弥の作で小堀遠州の補作と言われている。寛政11年(1799)に刊行された都林泉名勝図会にも
「清水 成就院 相阿弥作 小堀遠州補作」
と記されている。相阿弥は生年不詳の室町後期の足利将軍家の同朋衆の一人である。絵画制作から書画の鑑定、座敷飾の指導や連歌など幅広い技芸に携わり、多くの庭園の作者に擬せられている。青蓮院の庭園が相阿弥の庭と名付けられているが、それ以外にも南禅寺聴松院、龍安寺、慈照寺、大徳寺大仙院、大徳寺龍源院などの庭園を作庭したと目されている。相阿弥の没年が大永5年(1525)とされているから、成就院は室町時代後期の庭となる。また小堀遠州が天正7年(1579)の生まれで、正保4年(1647)に亡くなっているため、相阿弥作・遠州補作とするとかなりの年月をかけて造られた庭である。
成就院庭園には相阿弥作以外に松永貞徳作という言い伝えも残されている。松永貞徳は元亀2年(1571)生まれの俳人で歌人・歌学者である。また承応2年(1654)に亡くなっていることから、小堀遠州と同時期の人物である。いずれにしても江戸時代初期の雰囲気をよく伝える庭園となっている。京都に三つあった成就院の内の一つとして、雪月花の月の庭と称され、国の名所に指定されている。残りの成就院庭園は、寺町二条から岩倉幡枝に移転した妙満寺成就院の雪の庭、現存していない北野成就院の梅花の庭とされている。成就院庭園は撮影不可となっているため、ここでは掲載できるものがない。しかし拝観の栞の配置図と成就院で販売されている絵葉書のセットは非常に良く庭園の雰囲気を伝えている。
庭園は面積約1,500平方メートルで、東山の峰々のふところに面して書院の北側から西側にかけて “く”の字状に広がる。高台寺のほぼ東に位置する高台寺山とそのやや南西にある霊山、そして清水寺の子安塔の東側にある清水山を結ぶ山並みに面している。書院の北側にある湯屋谷に接する部分に低い生垣を巡らしている。およそ40メートル四方の庭園であるにも関わらず非常に広く感じられるのは、高台寺山から清水山に広がる手付かずの山林を借景としているためである。さらに庭園内に置かれた蜻蛉燈籠の軸線上の山中に一基の石燈籠を建てている。この2基の石燈籠の距離感を表現することで、更にこの庭園の広がりを感じさせることに成功している。方丈縁側の東端からこの2基の石燈籠が、ほぼ一直線状に並ぶことを実際に庭園で確認できた。
先の都林泉名勝図会にはほぼ現状の庭と同じ図会が残されている。ほぼ三角形の形状をした池泉の中央には島が築かれ、先ほどの蜻蛉燈籠と烏帽子の形をした奇岩が配され北側から石橋、東南側から木橋が架けられている。池泉の水は北から注ぎ込み、そして西に流れて行く。ここに3枚目の石橋が架けられている。池中の小島には籬島石と呼ばれる巨石が置かれている。これはもう一つの島に置かれた烏帽子石の目を引く姿とは対照的な重量感のある四角い石である。籬島とは、古来名島として歌枕に使われてきた塩竈に浮かぶ籬島に由来しているのだろう。源融は塩竈の風景を想い抱き、難波の海で汲んだ汐を六条河原院に運び、塩竈で焼いたとされている。
庭に置かれた石燈籠は先の蜻蛉燈籠と境外に置いた石燈籠の他に、池の東に置かれた手鞠燈籠と西庭の樫の巨木の下に据えられた三角燈籠がある。手鞠燈籠は蜻蛉燈籠の軸線の少し上部に置かれているため、非常に小振りにも関わらず有名な燈籠となっている。
方丈北側縁の左に、豊臣秀吉寄進とされている誰が袖手水鉢を置いている。重量感に溢れているにも関わらず、襞を持った独特な形状の手水鉢は烏帽子石と同様に奇岩と言っても良いかもしれない。浅い奥行きの西庭にも自然石の手水鉢が置かれている。北庭と比較すると、西庭は非常に簡素な構成となっていることは先の都林泉名勝図会のもう一枚の図会からも分かる。この図会には手水鉢は描かれているものの三角燈籠の姿は見えない。この庭は生垣の外の紅葉谷を通じて京都の市街地を俯瞰できる。
方丈北東の清水山の斜面の上部には方形屋根を持った持仏堂が建てられている。この斜面には円形と方形に刈り込んだ樹木が幾層にも渡って植えられている。近景の刈り込みは円形を多用し、中景から方形の刈り込みの量を増やしていき、遠景の自然樹に繋いでいる。この現代性を感じさせるこの抽象表現は、都林泉名勝図会の図会にも既に描かれているため、近年になって改めたものではなさそうだ。同じような地形に築かれた智積院庭園でも円形の刈り込みはあっても方形の刈り込みは見えない。類似する表現としては、修学院離宮の大刈込を思い浮かべる。
持仏堂の堂宇も東福門院の寄進で、本尊の十一面千手観音と不動明王とともに歴代の住持を祀っている。
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