市原平兵衞商店
市原平兵衞商店(いちはらへいべえしょうてん) 2008/05/14訪問
四条烏丸の交差点から四条通を徒歩で東へ進む。堺町通を南に曲がった右手に市原平兵衞商店がある。ここへは何回も訪れているにもかかわらず、毎回柳馬場通から高倉通の間を迷って歩くこととなる。どうも四条通の曲がり角のイメージが記憶に残っていないようだ。
市原平兵衞商店は、創業明和元年(1764)のお箸の専門店である。かつては御所に出入りしていた御箸司であり、今でも一流料理人や料亭から支持される老舗である。東京の百貨店の催事でも何回か来ているため、東京でもある程度名前が知られていると思う。
店の外観はごくごく普通のお店にしか見えない。そのため多分店の前を通り過ぎてしまったのであろう。中に入ると400種類と言われる品揃えの豊富さに圧倒され、中々選ぶことができなくなる。通常の食事用から盛り付け用、揚げ物用と用途の違いや、檜、竹、杉、紫檀や桜など箸に使われる材質の違い。そして素地のままのものから漆塗りのものと仕上げの違い、大きさや断面形状の異なったものなど、ありとあらゆる箸がここにある。市原家の家訓は代々新しいものを創るということでこれだけの種類になったらしい。またこれだけの種類の箸を市原平兵衞商店で製作しているのではなく、その材質の特性は産地が一番良く知っていると言うことで、それぞれの木の産地の優れた職人に発注している。
先代がすす竹を使って創った「みやこばし」は市原平兵衞商店を代表する箸となっている。古い日本家屋に使われている竹で、長い時間をかけて囲炉裏やかまどの煙で燻されたものをすす竹と呼ばれている。竹の繊細な感じは残しながら丈夫な箸となっている。
こちらの箸はどれも箸先が細く、折れてしまうのでないかと思うほどである。食べる時の神経が箸先に移るとも言われている様に、大雑把な箸の持ち方では扱えない箸である。
箸以外にも竹で作ったスプーンや耳かき(非常に使いやすい角度になっている)など多くのもの並べられている。何に使うのか分からないものがあり、いろいろと店の人に教えてもらいながら選ぶこととなる。それが老舗の楽しみでもあるのだろう。
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