炭屋旅館 その2
炭屋旅館(すみやりょかん) 2008/05/14訪問
本日泊まった部屋は「安宅の間」、能の安宅から名付けられた客室である。玄関から客室をつなぐ廊下を進むと中庭が現れる。さらに進むと照明も明るく、新しく作られた部分に入る。安宅の間はこの増築部分の1階にある。
部屋の開き戸を開けると、板の間の踏込みがある。正面の壁に和風の照明器具が設けられ、比較的明るい。天井は部屋内方向へ渡された丸材の竿縁天井となっている。さらに細い角材を横方向にも流しているため、狭い空間ではあるが密度を高めている。
次の間は踏込みを入って左手にある。上がり框の先には衝立が置かれ、その先には主室への襖が見える。襖の右上方には小さな障子の引き戸が入れられている。これは次の間から主室の灯りが点いているか確認できるように付けられているのだと思う。また引き戸としているので換気にも使用しているのかもしれない。次の間は3畳と板間の広さとなっている。板間の先は小壁となり、裏に置かれた冷蔵庫とその上部の座布団を入れる収納を隠している。ちなみに食事の際に冷酒をお願いしたら、この冷蔵庫から出してきた。天井は煤竹を使った竿縁天井となっている。
次の間の右手側、すなわち踏込みの裏側には、洗面所、便所、浴室への入口がある。正面に便所、左手に洗面所と脱衣場そしてその奥に浴室が配置され、板敷きとなっている。便所は新しい洗浄器付の便器とともに、高齢者用の手摺が取り付けられている。消臭用に匂い袋が置かれていた。後で女将に伺うと石黒香舗と懇意にしており、それを使われていることだった。
便所の左手を入ると正面に洗面台、右に脱衣籠とドライヤーなどが置かれた棚、左手に浴室へつながる戸がある。床は便所と同じく板敷き、天井は竹小舞を竹割竿縁で押さえ、非常に繊細な印象を与える仕上げとなっている。洗面台は木のフレームの中にタイルを貼った仕上げとなっているため、既製品の洗面台を置いたものよりこの客室のイメージに馴染んでいる。この洗面台の前面に手摺が取り付けられている。籐のスツールと屑篭が洗面台の下に置かれている。
浴室の扉は既製の住宅用サッシュを使用している。メンテナンス的にはこれが最善と思われるが、どうにかならなかったのか?壁は腰から下は床と同じタイル貼り、その上は板張り。天井はパネル状になっているのでバスリブのようにも見える。湯船は槙あるいは桧を使っていると思われる。腰壁の上に作られた窓は外を覗くと言うよりは、換気のためのものである。こちらにも当然、手摺が取り付けられている。
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