金戒光明寺
金戒光明寺(こんかいこうみょうじ) 2008年05月17日訪問
真正極楽寺の本堂の裏を南に歩いていくと、いつの間にか金戒光明寺の境内に入っていく。
浄土宗総本山の金戒光明寺の山号は紫雲山。浄土宗の開祖・法然は、知恩院、安楽寺そして法然院で触れたように、長承2年(1133)に現在の岡山県にあたる美作国久米南条稲岡庄、押領使(律令制の令外官の一つ。警察・軍事的官職)・漆間時国の長子として生れている。幼名を勢至丸と言い、9歳の時父が源内武者貞明の夜襲を受け不意討ちに倒れている。その後比叡山に登り、源光上人に師事するが、15歳の頃に同じ比叡山の皇円の下で得度し、比叡山黒谷の叡空に師事して「法然房源空」と名のる。比叡山は根本中堂のある東塔堂宇群、横川堂宇群そして西塔堂宇群に分かれるが、比叡山の黒谷は西塔堂宇群の北の外れに位置する。現在も天台宗でありながら総本山知恩院が管理を行っている比叡山黒谷青龍寺が法然上人御修行の地として大津市坂本の地に残る。
法然は承安5年(1175)法然43歳の時、善導の「観無量寿経疏」によって専修念仏、つまり「南無阿弥陀仏」とただ一心に称えることにより、貴賎や男女の区別なく西方極楽浄土へ往生できるという考えにたどり着く。この年に法然は比叡山を下り、東山吉水に住み、念仏の教えを広める。現在の知恩院勢至堂付近に草庵を営んだとされている。これが浄土宗の立教とされている。
金戒光明寺の公式HPでは以下のように記している。
法然上人がはじめて草庵を営まれた地である。十五歳で比叡山に登られた上人が承安5年(1175年)四十三歳の時お念仏の教えを広めるために、山頂の石の上でお念仏をされた時、紫雲全山にみなぎり光明があたりを照らしたことから この地に草庵をむすばれた。これが浄土宗最初の寺院となった。
法然は生前、寺院を開創することを行わなかった。この草庵は白川の禅房と呼ばれ、もとは比叡山黒谷の所領であった。法然の師である叡空が入滅すると、黒谷の本房と白川の本房は法然に与えられた。そのため比叡山の黒谷を元黒谷、岡崎の地を新黒谷と呼んでいる。後に法然は弟子の信空に黒谷の本房と白川の本房を与え、信空はこの地に住んでいる。元久元年(1204)から始まる天台宗の浄土門に対する弾圧、いわゆる承元の法難に際し、法然が信者に戒めを求めるために示した七箇条制戒の執筆を信は空勤め、法然が流罪となっている間は京都における教団維持に尽力している。第5世恵顗の時代に堂宇を整え、法然の故事に因み紫雲山光明寺と号する。第8世運空は後光厳天皇に戒を授けたことにより、金戒の二字を賜り、金戒光明寺と呼ぶようになっている。さらに後小松天皇から浄土真宗最初門の勅額を賜っている。
江戸時代初期に知恩院とともに城郭構造に改修されている。そして文久2年(1862)京都守護職の本陣となる。金戒光明寺の公式HPには、黒谷が本陣に選ばれた理由を、城構えであり西から進軍する敵に対しては大山崎、淀川のあたりまで見渡せたこと、御所まで約2キロメートル、粟田口までは1.5キロメートルと要所に近いこと、そして約四万坪の大きな寺域に52の宿坊があり、駐屯の為に大方丈及び宿坊25ヶ寺を寄宿のためしようできたことをあげている。
聖護院の前を西から東へ走る春日上通の突き当りに金戒光明寺のくろ谷と記された碑の傍らに高麗門がある。この門を潜り直進すると、参道は左に折れ、長く続く石段の途中に豪壮な山門の姿が現れる。この山門は応仁の乱(応仁元年(1467)~文明9年(1477))で焼失し、万延元年(1860)に完成している。後小松天皇宸翰による浄土真宗最初門の勅額が掲げられている。 石段はさらに続き、上りきった先は開け、正面には昭和9年(1934)に焼失後、昭和19年(1944)に再建された御影堂と大方丈が建つ。御影堂の右手前には慶長10年(1612)豊臣秀頼が再建した阿弥陀堂があり、黒谷で最も古い建物とされている。阿弥陀堂の東の高台には、寛永10年(1633)建立で重要文化財に指定されている三重の文殊塔が建つ。文殊塔の周囲の東から西へ上る斜面は金戒光明寺の墓地となっている。全ての墓碑が西向きに祀られている。
山内には、熊谷次郎直実が出家し法力房蓮生となり、庵を結んだ紫雲山蓮池院がある。
熊谷次郎直実は永治元年(1141)武蔵国熊谷郷に熊谷直貞の次男として生まれている。もとは平家に仕えていたが、石橋山の戦いを契機として源頼朝に臣従し御家人となる。一ノ谷の戦いで平敦盛を討ち取り、殺生の虚しさに気付き以後源平の戦いには参加しなくなる。そして直実はこの黒谷で、鎧を洗い、松の枝にかけ、馬をつなぎ、法然上人の門を叩いている。そして敦盛の供養のために庵を結び、出家している。なお西山浄土宗総本山 光明寺は、蓮生が建久9年(1198)に念仏三昧院を建立したことに始まる。
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